採用にまつわる『忘れられないご辞退のワケ』

私が前職のエージェントで見聞きした「驚愕の書類選考不合格理由」について、採用活動中の企業様の「採用力向上」の一助になればと考え、ご紹介します。

これは、人事担当者の方というより、現場の責任者に非常に多い印象でした。

・大学の校名だけで決める

 しかし、各大学の学部ごとの試験形式まではご存じない。新設学部について知識がない。そもそも、大学の人気度や強みが「時代によって異なる」ことをご存じない。

 そのせいで、せっかくの逸材を書類選考で落としてしまう…そんな方は、少なくありません。

・サークルや部活に対する思い込み、偏見

 「体育会系はタフで元気がいいが、文化系サークルは内向的」

 「軽音楽部でバンドをしている人は反抗的」などがありました。

 こんな理由でご本人に会うことをせず、書類選考で不合格を出す企業様がいらっしゃいます。

・アルバイトや居住環境について

 「いろんなアルバイトを転々としているのは、我慢ができないからだ」

 「女子学生なのに、お酒の出る店でアルバイト(注:普通の居酒屋です)をする人はコワイ」

 「一人暮らしの女子は採りません。昔から」など。

上記は、いずれも中途採用選考でのお話です。いかがでしょうか。

「職務経歴書」を読み込む前に、キャリアシート(履歴書)だけでジャッジしてしまう選考者が、本当に多いのです。「書類選考読解力不足」と言っても過言ではないとさえ思えます。

ITの発達により、時代の変化のスピードは速くなる一方です。価値観は年代ごとに横軸で細分化され、世代を超えた共通言語も失われつつあります。話し言葉だけでなく、文字として書き写されたものですら、その実態は読み取れないと思うほどです。

選考書類を「読解」することは、かなりの「想像力」と「新鮮な知識」、「柔軟な想像力・推理力」が必要です。かくいう私はどうしているか。年次ごとの流行、事件や災害だけでなく、ヒットしたマンガやアニメ、音楽など、学生生活に影響を与えたものを調べます。特に対象者の中学時代の事物は、人生に与える影響がかなり大きいと感じています。また、見たことがない大学や学部もしっかり調べます。偏差値の数字だけでなく、大学の立地も調べ、どんな学生生活を送ったのかを想像します。場所の情報を事前に理解し、選択できるアルバイトの種類もリサーチします。

「忙しいのに、そんなことまでできない」と言われそうですが、今や人材争奪戦の時代です。「可能性を見出す書類選考力」・「可能性を引き出す面接力」が、これからは絶対に必要です。

人材育成は公事

ウィズコロナ時代、日本ではすっかりマスク生活が根付きました。それに伴い、相手の声が聞き取りにくい、表情が見えず感情を読み取りづらい、というコミュニケーションの問題も持ち上がっています。欧米人はマスク嫌いと言われますが、理由として彼らは感情を読み取る際に「口元」の観察を重視し、東洋人は「目元」に注力しているとの研究があります。また、欧米人には、表情は言葉の一部という考え方があります。身振り手振りが大きく、表情豊かに会話する、まさに非言語コミュニケーションの達人です。一方で、日本人がきまずい時に笑う、怒っているのに無表情になるなど、気持ちと反する表情を見せることは、彼らには混乱するコミュニケーションにうつるようです。分かっていないのにうなずいたり、分かったふりをするのはなぜなのかという意見もあります。

この現象、みなさんの組織内でも起きていないでしょうか。

もともと日本人は、負の感情や異なる意見をはっきり表すことを控える傾向にあると言われます。会議では意見を言わなかったものの、後になって「あの時はこう思っていた」という話が出てくることは珍しくありません。ビジネスにおいては、感情を出さずに冷静に対応する場面も必要かもしれません。しかし、組織で仕事をする以上、議論が白熱したり想いをぶつけ合ったりすることで、化学反応が起きるのも事実です。場の空気を乱したくないと口を閉ざすのでは、何も生まれません。それぞれが異なる意見を持ち寄り議論することで、物事を多角的に見ることができ、その結果、最適と思われるものを生み出すことができるのです。

自分の感情を表出することが難しい時代、改めて言葉の大切さを認識し、思いを伝え合うことを大切にしてみませんか。