言いたいことが言えない風土を放置していませんか?!

先日、前職の上司に会う機会がありました。CA教官としてカリスマ的存在で、私が理想とする上司でした。現在は、現役を退いた航空会社の専門職がノウハウを提供する、企業向けの研修講師として活躍しています。

最近は、コミュニケーションに関する依頼が増えたそうです。リモートワークが加速し、コミュニケーション不全が起きているのは、どの業界も同じようですね。

提供している研修で人気なのは「アサーション」とのこと。

アサーションとは「自分も相手も大切にする自己表現」と定義され、「自分の考え、欲求、気持ちなどを率直に、正直に、状況にあった適切な方法で述べること」と言われています。発祥は1950年代と古く、抑圧された人々が適切に自己主張し、声をあげる方法として生まれ、黒人や女性の権利を主張するアメリカの人権運動を通じて発展を遂げました。自己主張の苦手な人や立場の弱い人が、相手と対等な立場を獲得するためのスキルが多様に含まれています。

アサーションではコミュニケーションタイプを3つに分類しています。

1.アグレッシブ(攻撃型)

相手の気持ちや立場を配慮せずに、一方的に自分の意見を主張します。自分を守ろうとする気持ちが強く、反対意見に過剰に反応する傾向。

2.ノン・アサーティブ(受け身型)

対立を避けたい、自分がやった方が早いという気持ちから、言いたいことを伝えられずNoが言えない。

3.アサーティブ

相手の立場や気持ちを尊重しながら、自分の気持ちや考えをうまく伝えられるタイプ。

日本では2のノン・アサーティブのスタイルを取る方が非常に多く、自分の感情に蓋をしてNoと言えない謙虚な気質だと言われています。それに加え、目上の人を敬う文化も相まって、目上の人の意見に同調する傾向にあります。

相手の気分を害することなく、自分の要求を伝えることは、ビジネスにおける基本的なスキルですが、それができているかどうか確認する機会は、なかなかありません。思っていることが伝えられなくては、仕事の負担やストレスが高くなり、パフォーマンスの低下だけでなく離職にもつながりかねません。ハラスメントを意識して言葉を選び、適切な表現をする上司が増えてきましたが、部下も同様に言いたいことを適切に表現する方法を習得する時代です。当たり前ですが、上司の言うことは絶対ではありません。上司も意見具申を期待しています。皆さんの職場も健全なコミュニケーションができているか、この機会に確認してみませんか。