分からないことはありますか?では聞き出せない?!

今回も新入社員受け入れのテーマでお送りします。

数年前まで私は、企業の新入社員研修の講師をしていました。一昔前は、企業の担当者から「とにかく厳しくしてやって欲しい。学生気分の抜けない人が多いから」と言われていました。確かに、学校を卒業して好きな時間に起き、自由に時間を使っていた彼・彼女たちは、入社式を境に生活が一変します。「分からないことがあれば、いつでも聞くように」と伝えてはいるものの、新しい環境、新しい人間関係、膨大な情報が一気に押し寄せます。そのため、自分が何を分かっていて何が分からないのか、整理がつかない人も多くいたように思います。

成長のキッカケは、自分で考えることです。整理がついていない状況からシフトし、自分で考えるように変化させるにはどうしたらよいでしょうか。それは、質問をすることです。人は、質問をされると思考が開始します。しかし、「分からないことはありますか?」という質問では、なかなか本音を引き出せません。「あります」と答えると、「なにが分からないのですか?」と質問が続くことが予想されます。そのため、頭の中が整理されていない人は、つい「ありません」と答えてしまうのです。

では、有効な質問は何でしょうか。私は、こんな風に聞いていました。

「ここまで学んで、どんなことを感じましたか?」

「理解できたことは、どんな点ですか?」

オープンクエスチョンへの答えを言語化しようとすると、必然的に考えるようになります。言語化する過程で、分かったような、分からないような状態を行ったり来たりします。ここで大切なのは、言葉にすることです。上手に表現し、相手に伝えることが目的ではありません。自分の体験を言語化すること、これこそが学習です。コーチングスキルに「オートクライン」という手法があります。質問によって相手に話させ、自分自身が発した言葉に「自分はこんなことを考えていたんだ」「こんなやり方の方が良いかもしれない」と発見することを言います。

話しながら頭の中を整理できた経験は、皆さんにもあると思います。ぜひ会話を通じて、相手の頭の中を一緒に整理してあげてください。何を分かっているのかを知ることで、教える側も気付くことがあります。人は話を聞いてくれる人を信頼します。双方向の会話を通じて、新入社員は存在欲求が満たされ、安心して前に進めると信じています。

人は失敗をするもの

まもなく新年度が始まります。新たなメンバーを迎える企業も少なくないでしょう。

今日は新社会人を迎えるにあたり、失敗についてフォーカスしたいと思います。

前職の航空会社では、失敗を繰り返さないために仕組みや考え方で工夫する文化がありました。

「人は失敗をするもの」という大前提が根底にあります。

人は本質的にヒューマンエラーを起こします。見間違いや思い込み、記憶忘れ、操作ミスなど、人間の性質に起因するさまざまな原因があるからです。Aさんが失敗した事例は、そのときたまたまAさんだっただけで、BさんにもCさんにも起こり得るもの、というのが基本的な考え方です。ルール違反、怠慢、手抜きといった故意によるものについては叱る対象になりますが、ヒューマンエラーについては叱る対象にはなりません。大切なのは失敗を隠すのではなく、原因分析し他の人にも共有しよう!と失敗をオープンにする文化です。また、誰がやったのかと人にフォーカスするのではなく、原因や背景を掘り下げ、失敗を「人」と「事」で切り分けることも重要です。

厚生労働省の職場の安全サイトでは、ヒューマンエラーの防止策として次の4つを挙げています。https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo62_1.html

 1)人が間違えないように人を訓練する。

 2)人が間違えにくい仕組み・やりかたにする。

 3)人が間違えてもすぐ発見できるようにする。

 4)人が間違えてもその影響を少なくなるようにする。

しかし、どんなに画期的な方法や仕組みを導入しても、人が行う以上、失敗は起きます。

特に新人さんは、慣れない仕事で過度に緊張することもあるでしょう。

彼らが適度な緊張を保ちつつ、最大のパフォーマンスが発揮できるよう、

職場の雰囲気を最適に保つ心配りが必要かもしれません。

みなさんの職場では、失敗をどう生かしていますか。

失敗事例をオープンにし、原因究明の際に「人」と「事」を切り分けて考えていますか。

成果を出しやすい適度な緊張感のある職場作りが励行されているでしょうか。

4月を迎える前に、この辺りの点検をしてみるのも必要かもしれません。