経営人材が『育つのを待つ』は、正しいでしょうか

コンサルをしていると、経営人材は意識的に育て上げるものではなく、育つのを待つしかないという受け身的な思考を感じることが多くあります。欧米企業に比べ、日本企業に多く見られる考え方です。背景には、「適材適所」という聞こえの良い考え方のもとで、人材配置を行ってきた経緯があるように感じます。

「なぜその人をその職に就けたのか」と問い詰められても、きちんと説明できず、

「とにかく私を信じてくれ」と言うしかなかった。

適職なのかは、やらせてみないとわからない。その結果、うまくいかなかった。

――このような事例は枚挙にいとまがないのです。

抜擢人事を進めた結果、選抜されない多くの社員がモチベーションを落とした。

うちでは社員全員で頑張っているのだから「平等」に取り扱うべきだ。

登用や選抜にはリスクが内包されているため、このような横並びを尊重する思考になってしまうと考えられます。

しかし、エネルギー自由化やカーボンニュートラル社会の到来という変化の大きな時代には、企業の変革も待ったなしの状況です。時代に合わせ新たな未来を切り拓く経営人材は、

今まで以上に重要な存在になっています。企業変革の道筋では、分社化、事業部制再編、多角化など、様々な経営戦略的側面で経営人材を複数名登板させ、真価を発揮していく必要がでてきます。そして、その価値は、計画的な経営人材パイプライン強化策、体系的な人材育成戦略にも波及していくのです。

未来から今を見る視点を持つと、いま足りない機能は何か、どんな職務が必要か、

遂行できる経営人材は何人不足しているのか、という差分で捉えることができます。

その時にまず必要なのが、明確な職務の定義とその職務を担う人材要件の明確化です。

つまり、意識を180度転換させ、「適所適材」の配置思想にすべき時がきているのです。

その結果、経営人材が「育つのを待つ」という消極的な姿勢から脱却することができます。

つまり、長期的に継続する戦略実現は、優れた人材の「適所適材」にかかっているという強い認識を持ち、意識的かつ積極的に人材強化を図ることが必然となっているのではないでしょうか。

製薬会社にて人事部長、医薬品開発企業にて人事部長、役員に就任。 2006年、人事コンサルタントとして独立。 グローバル企業、大手企業でのコンサルティング、研修経験多数。 国内外の最新の人事情報や開発手法に精通。 2022年株式会社NGK副社長就任。