農業と人材育成3

今回は、固定種のお話です。

我が家は固定種で野菜を育てています。

自然農法として農薬、肥料を使わず、極力水やりをしないで家庭菜園をしています。

この度、いんげんが初の固定種からの種で発芽しました。

心なしかたくましい発芽に見えるのは、想いがありすぎるからでしょうか。

固定種は、親から次の世代、また次の世代へと形質が変わらず受け継がれる種のことです。

育った野菜からは、味や形が固定した種を採ることができます。

しかし、この安定した状態を維持することは、簡単ではありません。

現代農業で主流のF1種は、種の情報を次世代が必ず受け継ぐとは限らないからです。

F1種(first filial generation/雑種第一代)は、交配で生まれた一代目の種です。

形や大きさ、収穫時期を揃えて安定した出荷を目指したり、病気に強い種を作ったりするために、異なる品種をかけ合わせて作られます。この第一世代に限り、安定した収穫結果が得られます。

次世代以降は、種を採取しても形質にバラつきが出て、ふぞろいになります。

生命力が弱まるケースがあるとも聞きます。

そのため、同じF1種を育てるためには、毎回種を購入する必要があります。

固定種は、何世代にもわたる自然淘汰や、よい株を残すという人為的選抜によって、特性が固定しています。

我が家の固定種から採取した種で、さらに強い作物が育つかどうかは今後のお楽しみです。

できるだけ水や肥料を与えず土壌が持つ力で栽培しているため、野菜自身が強く根を張り、

水分と養分を吸収する力を身につけなければなりません。

植物は、種を通して環境に適応するための情報を子孫に伝えるとも言われます。

種から種へと育つ過程で、我が家の土壌に合った種へと進化していくのではと期待しています。

生命が持続しながら発展していく固定種野菜のように、

種である人材も、土壌である職場の環境との相互作用的な関係の中で、

よりよい成長を見せるのであろうと妄想しました。

農業と人材育成2

前編の「農業と人材育成」のTipsには、たくさんの反響をいただきました。

ありがとうございました。今回も農業と人材育成のテーマで話をします。

さて、今回は水やりです。

これまでは、家庭菜園で一般的に言われるようにトマトはぎりぎりまで水をあげず、キュウリは水をたっぷりと、と種類に合わせた栽培を意識してきました。人材育成の視点では、相手によって育て方を変えるとして話をしたものです。

今、我が家がしている固定種、無農薬、無肥料農法では、基本的には水は与えず雨水だけで育てています。長く雨が降らず、葉が黄色になりかける手前まで水は与えません。

水を与えないとどうなるか?

水分・養分を求めて根が下へ下へと伸びるそうです。

深く根を張ることで、強くたくましく育つことになります。

逆に水を与えていると、地表近くにある水を吸い上げるため根は浅く、自然界からすると根が弱い作物となるのでしょうね。

このことを知って、農業と人材育成ってほんとうに同じだと思いました。

昨今、新人や若者は丁寧に教えないと育たないと言われます。

もともとの育ちとその環境を見極め、成長がどう変化するのかしっかりと目を配る観察力、タイミングを見て手を差し伸べる判断力が、育成側に大切であることは言うまでもありません。しかし、与えることだけでなく、自身で水と養分を取りに行くことで、深く強い根が張るのではと思います。

農業も人材も本来の力を最大限に伸ばす育成を目指しています。

農業と人材育成

昨年から、我が家の庭は一面の畑に代わりました。

作物にとって厳しい冬ながら、現在はキャベツ、ブロッコリー、じゃがいもなどを育てています。当初はホームセンターで苗を購入し、有機肥料を与え、防虫ネットをかけて手厚く(?)育成しました。結果、作物によっては見事に虫たちのえさとなる、散々な結果でした。

その後、いろいろとYouTubeで学び、固定種を購入しました。

自宅の部屋で育苗し、定植も肥料は一切与えず、水も雨水中心として、種からの栽培にチャレンジしています。そんな取り組みの中で、野菜を育てることと人材育成は、何かと共通点が多いと感じています。

まずは何といっても種。人間でいえば、もって生まれた気質、性質、または育ちでしょうか。

現在、市場に出回っている種は、ほとんどが一代限りのF1種(Filial 1 hybrid、一代交配種)です。F1種は、優勢な遺伝子を持つ親同士の異なる性質を掛け合わせて人工的に品種改良し、発芽や生育を揃えたり、耐病性をもたせたりします。

「桃太郎」というトマトの品種は、強い甘みに加え、完熟後に収穫しても輸送に耐えうる硬さを持つため、スーパーの棚に長く置くことができ、廃棄コストが減るという理由で市場を席捲しました。

均一に背丈が揃い、効率よく大量生産することに優れている、手のかからない便利なF1種ですが、優性遺伝が出るのは一代限りです。F1種の作物を育てる農家は、種苗会社から毎年タネを購入しなければなりません。

一方、固定種は、育てた作物から一番良い状態のものを選抜してタネを取り、まきます。

さらに育った作物の一番良いものからタネを取り、育てます。そうした自家採種は、その土地・風土に合うタネをその場所で何世代も繰り返して、つないだものです。

我が家では、固定種を庭の土壌だけで育てています。一代、二代ではうまく育つかわかりません。すでに収穫した葉物は不揃いですが、こんな食感と味だったの?と思える、その種の本来の味やうまみが感じられます。いずれ、品種ごとに我が家の土壌にあった種が選別されていくと期待しています。また、堆肥なしで育てることは、種のもつ強さを活かし、虫と共生する成長になるのではと思っています。

さて、種を人材育成に例えると、人材も粒ぞろいを集めるよりは、いろんなメンバーを揃えて、組織の土壌の中で切磋琢磨することで、土壌の養分をたくさん得てたくましく成長するのであろうと思います。次回は水について考えたいと思います。