農業と人材育成

昨年から、我が家の庭は一面の畑に代わりました。

作物にとって厳しい冬ながら、現在はキャベツ、ブロッコリー、じゃがいもなどを育てています。当初はホームセンターで苗を購入し、有機肥料を与え、防虫ネットをかけて手厚く(?)育成しました。結果、作物によっては見事に虫たちのえさとなる、散々な結果でした。

その後、いろいろとYouTubeで学び、固定種を購入しました。

自宅の部屋で育苗し、定植も肥料は一切与えず、水も雨水中心として、種からの栽培にチャレンジしています。そんな取り組みの中で、野菜を育てることと人材育成は、何かと共通点が多いと感じています。

まずは何といっても種。人間でいえば、もって生まれた気質、性質、または育ちでしょうか。

現在、市場に出回っている種は、ほとんどが一代限りのF1種(Filial 1 hybrid、一代交配種)です。F1種は、優勢な遺伝子を持つ親同士の異なる性質を掛け合わせて人工的に品種改良し、発芽や生育を揃えたり、耐病性をもたせたりします。

「桃太郎」というトマトの品種は、強い甘みに加え、完熟後に収穫しても輸送に耐えうる硬さを持つため、スーパーの棚に長く置くことができ、廃棄コストが減るという理由で市場を席捲しました。

均一に背丈が揃い、効率よく大量生産することに優れている、手のかからない便利なF1種ですが、優性遺伝が出るのは一代限りです。F1種の作物を育てる農家は、種苗会社から毎年タネを購入しなければなりません。

一方、固定種は、育てた作物から一番良い状態のものを選抜してタネを取り、まきます。

さらに育った作物の一番良いものからタネを取り、育てます。そうした自家採種は、その土地・風土に合うタネをその場所で何世代も繰り返して、つないだものです。

我が家では、固定種を庭の土壌だけで育てています。一代、二代ではうまく育つかわかりません。すでに収穫した葉物は不揃いですが、こんな食感と味だったの?と思える、その種の本来の味やうまみが感じられます。いずれ、品種ごとに我が家の土壌にあった種が選別されていくと期待しています。また、堆肥なしで育てることは、種のもつ強さを活かし、虫と共生する成長になるのではと思っています。

さて、種を人材育成に例えると、人材も粒ぞろいを集めるよりは、いろんなメンバーを揃えて、組織の土壌の中で切磋琢磨することで、土壌の養分をたくさん得てたくましく成長するのであろうと思います。次回は水について考えたいと思います。

大阪ガス株式会社にて、法人営業、流通チャネル指導を担当。 同グループの京都リサーチパーク株式会社にて、新規事業開発 コンサルティングおよび人材育成事業を立ち上げ、センター長就任。 2006年株式会社NGK設立、代表取締役就任。